リンクさせて頂いている青松六花のさー坊様より 恋ルキ話『時を経ても色褪せぬ紅 〜千日紅〜 』を頂きました!! 思いやりのあるとても優しい方ですが、同時に一本筋の通ったしっかりした考えを持った思慮深い方です。 さー坊さん、とっても素敵なお話を書いて下さって、 本当にどうもありがとうございました!!

千日紅  『時を経ても色褪せぬ紅 〜千日紅〜 』 (ルキア視点) まだ霊術院に入って間もない頃、 流魂街から出てきたばかりの私たちには静霊廷の町並みは物珍しく、 授業が終わった後よく二人で街に出ては見物をしたものだった。 その日もまた、何気なく二人で一緒に街に繰り出した。 そして、其れを見つけた。 「恋次、不思議な花だな。」 「・・・カサカサしてんな。」 「貴様の頭みたいに真っ赤だな。」 それは初めて見る植物で、でも花の形は・・・流魂街でも咲いていた白詰草にも似ているような。 其の店は花屋で、近くにあった説明書きをみれば、『千日紅』と書いてあった。 「千日も紅い花・・・なのか?」 「さあな。名前だけかもしれねーけどな。」 紅い白詰草のようで懐かしさもあり、 また本当に千日も紅いままなのかという不思議さもあって、 ずっと私は時を忘れてじっと見つめていた。 私がずっと不思議そうに其の花を見ていたからだろうか、奴は、 「すんませーん、この花ください。」 「れ、恋次?・・・お前、金なんて」 鉢に植えてある『千日紅』は贈答用に包まれていて、 当時の私たちにはとても手が出せる値段ではなかった。 「・・・こっちだよ、こっち。」 恋次が指差したのは、切花になっているもの。 2本が束にされ、薄い紙がくるりと巻かれていた。 ・・・恋次が少ない小遣いからお金を払うと、私に其の束を押し付けた。 「ほれ、やるよ。」 「べ、別に私は欲しいとは」 「・・・本当に千日も紅いままか、確認したくねーのか?」 笑みを含んだ声色で、私にそう言った恋次。 見上げた其の顔が、太陽の逆光のせいなのか・・・眩しくて見えなかった。 私は恋次に押し付けられた束から1本を抜き取った。 「ん?」 「此れは貴様に返す。」 「あ?なんでだ?」 「貴様も一緒に観察しろ。本当に千日も紅いままなのか。」 仕方ねーな、といって、1本を受け取った恋次。 その手に摘まれた千日紅を見つめていたら、ふと笑いが込み上げた。 「貴様には花は似合わぬな。」 「テメェが押し付けたんだろーが。」 「元々私は欲しいとは言ってないぞ。」 「・・・素直じゃねーな、まったく。」 ・・・小さくて頼りない私の手と、 ・・・大きくて力強そうな恋次の手に、 1本ずつの千日紅。 そう、そんな何気ない出来事にも、何気ないものにも、何気ないことにさえも 何故だろう、 ・・・世界がとても輝いていたように感じたのだ、あの頃は。 ・・・あれから、幾年月を経ただろう。 私の自室の引き出しには、干からびた千日紅が一輪。 そう、此れだけは養子に入ってからも捨てられなかった。 捨てられぬように必死に隠して続けていたのだけれど。 恋次は・・・まだあの一輪を持っているだろうか。 いや、枯れたからといって、捨ててしまったかも知れぬな。 「・・・千日どころか、  ・・・今も色褪せることなく紅いぞ、恋次。」 そして、私も、此の花のように変わることなく・・・・ −−−−−−−−−−−−−−− (恋次視点) まだ霊術院に入って間もない頃、 流魂街から出てきたばかりの俺たちには静霊廷の町並みは物珍いものばかりで、 授業が終わった後よく二人で街に出ては見物をしたんだ。 そう、あの日もまた、何気なく二人で一緒に街に繰り出した。 そして、其れを見つけたのはルキアだった。 「恋次、不思議な花だな。」 「・・・カサカサしてんな。」 「貴様の頭みたいに真っ赤だな。」 それは初めて見る植物だった。 けどルキアが言うには、白詰草に似ているらしい。 一瞬俺は思い出せなかったんだが、ルキアが其の花で冠を作っていた話をしてくれて「ああ、アレか」と思い出せた。 其の店は花屋で、近くにあった説明書きには、『千日紅』と書いてあった。 「千日も紅い花・・・なのか?」 「さあな。名前だけかもしれねーけどな。」 俺は花なんかに明るくはねーけど、『さすがに千日も紅くはねーだろ』とは思った。 花だから、フツーに枯れるだろう、と。 けど、ルキアはじーっと、其の花を見つめていて・・・。 −欲しいのか、そんなの・・・。 でも、激変した生活に慣れねぇ中、もしかしたら寂しさもあったのかもしれない。 白詰草ではねぇけど、ま、少しでも気晴らしになるんだったら・・・・ 俺は自分の懐の中にあった小銭入れを取り出した。 中身はそんなに入ってねえのは知ってた。 流石にルキアが見つめている鉢植えは買えねえ。 ・・・ただ、その傍にあった、2〜3本が束になったヤツなら。 鉢植えと違って日持ちはしねぇかもしれねーけど。 「すんませーん、この花ください。」 「れ、恋次?・・・お前、金なんて」 「・・・こっちだよ、こっち。 鉢じゃなくて、こっちに切ってあるやつがあるんだ。」 ・・・俺が少ない小遣いからお金を払って束を受け取り、 其れをそのままルキアに押し付けた。 「ほれ、やるよ。」 「べ、別に私は欲しいとは」 「・・・本当に千日も紅いままか、確認したくねーのか?」 笑いをこらえながらそう言って、束を受け取ったルキアを見下ろせば・・・ 其の顔が千日紅の色を少し映したのか、ほんのりと紅くなっていた。 ルキアがふと、何かを思いついたように・・・束を解いて1輪ずつに分けた。 「ん?」 「此れは貴様に返す。」 「あ?なんでだ?」 「貴様も一緒に観察しろ。本当に千日も紅いままなのか。」 そういって俺に突き出すルキアの指が震えていて、 正直、可愛いと思った。 きっとルキアは、俺が嫌だといっても押し付けるだろうな。 「仕方ねーな」 「ふふふ・・・・」 「あ?・・・何笑ってんだよテメェ。」 「貴様には花は似合わぬな。」 「テメェが押し付けたんだろーが。」 「元々私は欲しいとは言ってないぞ。」 「・・・素直じゃねーな、まったく。」 ・・・小さくて愛らしいルキアの手と、 ・・・大きくてゴツい俺の手に、 1本ずつの千日紅。 そう、そんな何気ない出来事にも、何気ないものにも、何気ないことにさえも 何故だろうな、 ・・・世界がとても輝いていたように感じたんだ。 ・・・あれから、幾年月を経たんだろうな。 俺の自室の箪笥の上には、一輪挿しがある。 そこには、干からびた千日紅が一輪。 其れを見ては『花を飾っているなんて似合わない』と笑うヤツもいるけどよ、 此れだけは隊士になってからも・・・勿論今も捨てられないまま。 ルキアは・・・まだあの一輪を持っているだろうか。 いや、養子に入った段階で、捨てたか・・・捨てさせられたかも知れねぇな。 「・・・千日どころか・・・全然色褪せることねぇな、ルキア。」 そして、俺もあの時のまま・・・・
『千日紅』の花言葉: 変わらない愛情・不滅の愛・終わりのない愛・安全・無事・不朽・不滅・不死